piantinaの日記

日本のとある教会で弾いてるオルガニストの毒にも薬にもならない戯言

久々に読んだアスペルガー&カサンドラ関連の本の話。

みなさんこんにちは、Piantinaです。
いよいよお彼岸に入り、春になってきました。

 『アスペルガーのパートナーと暮らすあなたへ 親密な関係を保ちながら生きていくためのガイドブック』(マクシーン・アストン著、黒川由美訳 スペクトラム出版社 2016)

先日amazonであれこれと本を頼んだのがマクシーン・アストン著『アスペルガーのパートナーと暮らすあなたへ』という本です。マクシーン・アストン氏の本は『アスペルガーと愛』を持っていますが、新しく出たのがこの『アスペルガーのパートナーと暮らすあなたへ』という本です。日本で出るアストン氏の本ではおそらく最新のものかと思われます。以前ならば「アスペルガー症候群」と書かれるところが「自閉症スペクトラム症」と表記されているところもあります。

 

この本は全体的にもそんなに厚みのある本ではないので、割とぱっと読み終えることができます。どちらかというと「入門編」のような感じです。もともとは「パートナーがアスペルガー自閉症スペクトラム)と診断とされたばかりの定型発達者(非自閉)のための人の生活のガイドブック」に加筆したものがこの本なんだそうです。昨年、NHKの朝の番組、「あさイチ」で紹介されて爆発的に増加?(単にこれまで出てこなかっただけ?)した「カサンドラ症候群」の人向けの本です(まぁ、自閉症スペクトラムの当事者が読んでもいいかもしれませんが…)。

 

 

あの放送以降、自助グループの集まりに参加するにもあっという間に席が埋まってしまったり、世間での関心度が上がったなぁと感じますし、「あら、もしかしてうちもそうかも?!」という人が出てきたのかなぁと思います。私自身は悪い流れだとは思いませんし、これまでカサンドラの予言よろしく「誰に言ってもまともに相手にされない(たたとえ医者でも)、信じてもらえない、むしろ”あんたのほうがおかしい”と言われる」という苦しみの中に合った女性たちが自分の苦しみや思っていることを「話せる場」というのが増えてきたことについてはいい流れだと思います。

 

 

カサンドラ症候群になっている人はどちらかというと女性に多いですが、男性のカサンドラもいないわけではありません。検索すればいくつか「奥さんがアスペルガー」という定型男性のブログにもヒットすることがあります。また、必ずしも異性愛ではなく同性愛のカップルにも向けて書かれています。そのあたりはちょっと日本の今の実情とは違うかもしれませんが、これから同性婚のカップルが出てくる可能性というのを考えたら、たとえ日本であってもLGBT向けにも「非自閉の人がどうやって自閉症スペクトラムの人と暮らしていくか」という最初に読む本があったら、病むことも減ってくるのかも…と思います。

 

 

どちらかというとあれこれ読んじゃったり集まりに出てみたりした今の私自身よりは、「相手が自閉症スペクトラムと診断されてどうしよう」「これからASの人と暮らすことになった…」という人におすすめしたい一冊です。

 

 

アスペルガーの男性が女性について知っておきたいこと』(マクシーン・アストン著、テーラー幸恵訳 東京書籍 2012)

たまたま余力があったので、アスペルガー関係の本でamazonでも非常に評価が高く、前々から気になっていた本を買いました。この『アスペルガーの男性~』のほうは割とカサンドラの人の中ではルディ・シモン著『アスペルガーのパートナーのいる女性が知っておくべき22の心得』、カトリン・ベントリー著『一緒にいてもひとり』と並んで「必読書」のひとつにもなっているのではないかと思います(私はこの2冊はすでに持っていて読んでいます)。

 

 

ざっくりと読んだ感触でしかないのですが、これは「恋愛指南書」の定番、ジョン・グレイ著の『ベスト・パートナーとなるために』がさらに対アスペルガー男性向けに書かれた本、という感じです。『ベスト・パートナー~』のほうは特段自閉傾向がある人向けというわけでもなく、定型発達男女向けでもありますし、個人的には「恋愛の教科書」としてまず第一に挙げたいのがジョン・グレイ氏の本だろうと思っているくらいです。もちろん、恋愛状態でなく、結婚した夫婦でも十分読めるし関係改善にも役立つかと思いますが。

 

 

ただ、この『アスペルガーの男性が~』のほうは特に「アスペルガー自閉症スペクトラム症)男性」の目線からの「女性に対する疑問」にこたえる形で成り立っていますので、彼氏が、婚約者が、夫がアスペルガー(またはその疑い)の女性にとってはより「相手の思考、目線からの疑問点」からの解説になっているので、「ああ、自分ってこういう風に相手の目に映っていたのか」と納得できるところがあるかと思います。もちろん「アスペルガー発達障害)」じゃなきゃいけないのかというとそういうわけでもなく、普通の男性が読んでも納得できる部分はあるだろうなと思っています。

 

遺伝子プールにASD(アスペルガー症候群)があるメリットはきっとあるはずです。私は科学と芸術の目覚ましい進歩にはASの人たち、あるいはASだと思われる人たちの貢献があると考えています。それが事実であれば、人類にはアスピー(AS者の愛称)が必要ということになります。アスピーにはパートナーとなる人を魅了する特徴があるということにもなります。(トニー・アトウッド氏によるまえがきp.11)

確かに、自閉症スペクトラムの人が過去に淘汰されてしまっていたら、今のようなことは起きていないでしょう。彼ら(彼女ら)には「何らかの魅力」があるからこそ、ある一定数アスペルガーの人がいて、中には特異な才能をもって革新的なものを生み出したりして世の中に貢献しているのです。よくよく「相手がアスペルガーだ」というと、まだまだこの手の障害に対する正確な知識が認知されていないのか、さも「頭のおかしな人と暮らしている」と思われたり「病んだりする前に別れることをおすすめするよ」とアドバイスして来る人もいます。

 

 

遠い将来、結果的に「別れ」を選ぶことはあるかもしれません。でも、「別れる」ことを選ばずともうまくやっていける最良の方法が書かれていました。最終章です。

「好きになる」とは、二人がASを受け入れ、その影響を共に学び、相互理解をこれまで以上に深めることを指します。
この選択をすると二人とも変わっていきます。ただし、その変化はそれぞれで大きく異なります。女性の側ではコミュニケーションのスタイルが変わります。AS男性にもわかりやすい論理的な言葉を多く使うようになります。彼が自己表現しやすい雰囲気を作り、彼に対して現実離れした機体を抱かなくなります。彼にはうまくできないこともあると理解します。自分の感情や彼にしてほしいことを、もっと具体的にはっきりと伝えるようにもなります。(中略)ありのままの彼を愛し、彼の愛情表現が一般的でなくても受け入れるようになります。必ずしも彼女の願う方法ではないかもしれませんが、それが彼の愛の伝え方なのだと知ります。(中略)AS男性はパートナーに捧げる多くのことを備えています。ただし、それらの捧げものに感謝できるようになるには、時間をかけてありのままの彼を理解し、受け入れる必要があります。(中略)たいがいのAS男性は、口論や対立を望みません。また、感情面でのサポートを自分に求めてほしくないと思っています。彼女が感情面でのニーズを親しい友だち、あるいは個人的に好きなことや趣味を通して満たしてくれれば願ったり叶ったりでしょう。AS男性は心の駆け引きを好みません。彼女の望みを推測するより、はっきり言ってもらうほうがずっと楽なのです。AS男性がパートナーに求めることは、率直かつ正直でいる、意図を言葉で伝える、気を荒立てずに穏やかでいる、突然気を変えたりせず予測しやすい行動をとる、一人になれる場所や自分の興味に没頭できる空間を与える、そして彼を尊敬し、愛すること、それだけです。 (AS男性と非AS女性の関係は果たしてうまくいくのでしょうか p.201~202)

 非自閉(定型)しかも女性にとっては「情緒的なやりとり」や「共感できること」がなによりのコミュニケーションのベースとなっていますから、「なんで大人相手に”はっきりとわかりやすいように”話さなきゃいけないのか」とちょっと不満になるところはあるかと思いますし、「求めていたものと違う!」と怒り出すところかもしれません。だけども、アスペルガーという特性を正しく理解し、多少の試行錯誤を繰り返した結果として上記のようになれればなぁと思うばかりです。…っていうか物凄いヒントですね。

 

 

また、本の中には「パートナーを幸せにするためにできる(努力すべき)こと」がリストアップされています。「やっぱりあいつとは分かり合えない、定型のほうがよっぽど宇宙人だ!!」「あの人のやることなすことにはがっかりするし、こっちの気持ちをわかってくれなくてホントイライラするのよね!!」とならないようになっています。「えー女っていちいちめんどくせぇなぁ…」と思うかもしれませんが、リストの1項目でもやってみればその日から何かが変わるはずです。きっと。